本記事では、SES企業のバックオフィス担当者を悩ませる「月次報告の作成業務」を効率化し、毎月の負担を軽減するためのヒントを解説します。
- ・月末月初に集中するデータ収集の手間とエクセル集計におけるミスの原因
- ・経営層が求める「スピードと正確性」を満たす粗利計算の重要性
- ・外注費などの複雑な二重計算をクラウド一元管理で解消するメリット
- ・失敗しないシステム選びのコツ
日々の業務プレッシャーから解放され、スムーズに経営会議の資料を作成したい実務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
SES企業のバックオフィスにおいて、経営会議で提出を求められる「月次の売上・粗利レポート」の作成は、毎月最も気を揉む業務ではないでしょうか。
営業部門やエンジニア、パートナー企業など各所からデータをかき集め、エクセルとにらめっこしながら複雑な計算を行う作業は、担当者に重い負担を強いています。
本記事では、SESの月次報告作成においてデータ集めがいかに大きな課題となっているかを整理し、その根本的な解決策について解説します。
1.SES月次報告の現状と主な課題
経営会議に向けた「月次の売上・粗利レポート」の作成は、バックオフィスにとって最も頭を悩ませる業務の一つです。
正確な数字を報告する責任がある一方、SESの月次報告は単なる売上集計ではなく、複雑な契約条件と稼働時間を正確に結びつける必要があるため、作成過程は決してスムーズではありません。
多くの担当者が直面している現状と課題を改めて整理します。
1-1.各部署からデータが集まらない
月次報告の作成に取り掛かる際、最初のハードルとなるのが「必要なデータが手元に揃わない」という問題です。
SESの売上や原価の計算には、エンジニアの「稼働時間」、営業部門が持つ「案件ごとの契約条件」、パートナー企業からの「請求データ」が不可欠です。
しかし現状では、勤怠は指定のエクセル、契約情報は別フォルダのPDFといったように情報が各所に散在しています。
いざ作業を始めても「営業担当が商談中で契約内容の詳細が確認できない」「パートナー企業の提出が遅れ、稼働時間が確定しない」といった理由で作業がストップします。
チャットツールやメールで個別に連絡を取って状況を把握するだけでも一苦労です。
結果として担当者は各部署への催促に追われ、ただデータが届くのを待つ無駄な時間が発生します。
このデータの散在と収集の遅れが、その後の集計作業を圧迫する根本的な原因なのです。
1-2.手作業によるミスと業務負担の増加
苦労してデータを集めた後には、さらに過酷な「集計作業」が待っています。
フォーマットの異なるエクセルファイルやPDFを目視で確認し、レポート用のマスターエクセルへ手作業で転記していくプロセスは、業務負担を劇的に増加させます。
特によくある失敗例が、手入力や計算式の人為的ミスです。
SES特有の「控除・超過」計算では、案件ごとに精算幅や「上下割」「中割」といった計算ルールが異なります。
毎月エクセルを使い回していると、数式の参照セルがズレていたり、変更になった契約条件を反映し忘れたりするミスが頻発します。
また、営業部門から後になって「実は契約条件が変わっていた」と報告を受け、計算をやり直す手戻りも日常茶飯事です。
1円でも数字が合わなければ経営会議の資料として成立しないため、無数のシートを遡ってミスを探さねばならず、複雑な目視チェックの連続は担当者に強いプレッシャーを与えます。
1-3.月末月初の締め作業に集中する疲弊
これら「データの収集」と「手作業による集計」という重労働が、月末月初のごく限られた数日間に集中してしまうのが、バックオフィスの最も過酷な現状です。
稼働時間が確定しなければ売上も外注費も計算できないため、月半ばで前もって作業を進めておくことには限界があります。
月末の最終営業日が終わってからレポート提出期限までのわずか3〜5営業日の間に、全エンジニア分のデータを集め、複雑な計算をミスなく完了させなければなりません。
この期間は営業部門もエンジニアもそれぞれの業務で忙しく、問い合わせへのレスポンスが遅れがちです。
経営層からは「早く数字を上げてほしい」とプレッシャーをかけられる一方で作業は進まず、結果として、データが揃うのを夕方まで待ち、そこから深夜まで残業してレポートをまとめ上げるといった事態に陥りやすくなります。
毎月決まって訪れるこの激務は、どんな優秀な担当者にとっても精神的・肉体的な疲弊を招く大きな原因です。
2.経営層が求める月次の売上・粗利データ
経営会議で「早く数字を出してほしい」と急かされ、プレッシャーを感じているバックオフィス担当者は多いはずです。
苦労して作成する月次報告(売上・粗利レポート)ですが、なぜ経営層はそれほどまでにスピードと正確さを求めるのでしょうか。
経営側の視点を知ることで、私たちが直面している業務の重要性と、解決すべき課題を紐解いていきます。
2-1.なぜ迅速なレポート提出が必要か
経営層がスピーディーなレポート提出を求める最大の理由は、「いち早く状況を把握し、次の一手を打つため」です。
SES事業において、月次の売上と粗利は現在のキャッシュフローを把握し、今後の採用計画や営業戦略を決定するための「命綱」です。
例えば、ある案件で想定以上に粗利が圧迫されていたとします。
レポート提出が翌月中旬にズレ込むと、異常に気づくのが遅れ、単価交渉などの対策を打つタイミングを完全に逃してしまいます。
しかし、焦って手作業による集計を急ぐと「計算ミス」という手痛い失敗を招きます。
不正確な数字は経営判断を誤らせるため、結局は何度も再提出を求められます。
「スピード」と「正確性」の両立こそが経営層の真の要求なのです。
2-2.月末月初に算出すべき正確な粗利
SES事業の特性上、月の途中で粗利を完璧に把握することは困難です。
エンジニアの正確な稼働時間は最終日まで確定しないためです。
だからこそ、月が明けた翌営業日、すなわち「月末月初」のタイミングで、いかに速やかに1円の狂いもなく粗利を算出できるかが勝負になります。
具体的な手順としては、まず全エンジニアの最終的な稼働時間を集約します。
次に、その時間を案件ごとの契約条件に当てはめて確定売上を算出し、同時に発生した原価を確定させて最終的な粗利を導き出します。
よくある失敗例として、「営業担当から聞いた見込み数字」や「前月の固定金額」をそのままエクセルにコピーし、実際の稼働実績とのズレに気づかないケースがあります。
数時間の稼働変動で粗利が大きく変わることがあるため、短期間で正確な数字を出すことは至難の業です。
2-3.外注費と稼働時間を紐づけた原価管理
月次報告における正確な粗利の算出において、バックオフィス最大の悩みの種となるのが「外注費」の計算です。
もちろん、プロパー(自社社員)であっても、稼働時間に応じた顧客への請求(売上)の控除・超過計算は発生します。
しかし、社員の給与(原価)はSES契約の精算幅とは直接連動しないため、原価側の計算は比較的シンプルです。
一方で、パートナー企業(外注)を活用している場合、事態は複雑になります。
月末月初に稼働時間が確定した瞬間、「顧客との契約に基づく売上」と「パートナー企業との契約に基づく外注費(原価)」という、異なる2つの計算を同時に行わなければなりません。
顧客とは「精算幅140-180h(中割)」、パートナー企業とは「精算幅150-190h(上下割)」など、計算ルールが異なるケースもあります。
1人の稼働実績から異なる2つの金額を手作業で導き出すこの「二重の計算」こそが、ミスを誘発し月末月初の担当者を疲弊させる最大の要因なのです。
| 項目 | プロパー(自社社員)の場合 | 外注(パートナー企業)の場合 |
| 売上の変動 (顧客への請求額) |
稼働時間に応じて 控除・超過計算が発生する |
稼働時間に応じて 控除・超過計算が発生する |
| 原価の変動 (自社のコスト) |
稼働時間(精算幅)とは 連動しない ※固定の給与など |
稼働時間に応じて 控除・超過計算が発生する ※パートナー企業との 契約に基づく |
| バックオフィスの 計算負担 |
「売上」の計算のみ。 比較的シンプル |
「売上」と「外注費」の 二重計算が必要。 ルールが異なることが多く 極めて複雑 |
3.データを一元管理するクラウドの導入効果
これまでの手作業による限界を感じたら、解決策として検討したいのが「クラウドシステムによるデータの一元管理」です。
バラバラだった情報を一つのシステムに統合することで、月末月初の過酷な業務環境は劇的に改善されます。
ここでは、システム導入がバックオフィスにもたらす具体的な効果を解説します。
3-1.散在するデータの収集作業をゼロに
毎月のように「データ集め」に奔走していた時間が、クラウドシステムの導入によって実質ゼロになります。
具体的な手順としては、まず営業部門が案件を受注した段階でシステムに「契約条件(精算幅や単価など)」を入力し、「稼働時間」を同じシステム上で入力する仕組みを構築します。
ここでのよくある失敗例が、部門ごとに別々のツール(エンジニア向けには専用の勤怠管理システム、営業向けには別の販売管理システムなど)を導入してしまうケースです。
これでは結局、月末にデータをCSVで出力してエクセルで紐づける手間が残ってしまいます。
しかし、すべてを一元管理できるクラウドであれば、入力されたデータが最初から同じ場所に集約されます。
バックオフィス担当者が各部署のローカルフォルダを漁ったり、エクセルの提出を何度も催促したりするプロセスそのものが不要になり、月末月初は「システム上のデータを確認するだけ」で作業をスタートできるのです。
3-2.部門間の確認コストと待ち時間を削減
データが一元化されると、部署間の無駄なコミュニケーション(確認コスト)も大幅に削減されます。
これまでは、営業が作成したエクセルの契約書と、エンジニアから提出された勤怠表を突き合わせる際、「この案件の超過単価、先月から変わってない?」「〇〇さんの更新された契約書がフォルダに見当たらない」といった確認作業が頻発していました。
営業担当者が外出中だと、返信が来るまで集計作業が数時間ストップすることも珍しくありません。
しかしクラウドで情報が共有されていれば、バックオフィスからも営業部門が入力した最新の契約ステータスや履歴をいつでも閲覧できます。
「あの数字はどこにあるか」「この条件で合っているか」といったやり取りが消え、確認待ちによるタイムロスがなくなります。
また、システム上で承認フローを完結させることで、「言った・言わない」の社内トラブルも防ぎ、スムーズに業務を進められるようになります。
3-3.経営会議へ向けた資料作成の迅速化
最も大きな恩恵は、経営会議向けのレポート作成が驚くほどスピーディーになることです。
前の章でも触れた通り、SESの粗利は月の途中に把握することは難しく、月が明けた後の締め作業直後に計算する必要があります。
一元管理システムでは、月末月初にエンジニアの稼働時間が確定した瞬間、紐づけられた契約条件をもとに、複雑な「プロパーの売上」はもちろん、最も厄介だった「外注費の二重計算(控除・超過)」までもが即座に算出されます。
手作業でVLOOKUP関数を駆使し、1円のズレを探して深夜までエクセルと睨めっこしていた時間が嘘のように、締め作業が完了したと同時に正確な売上・粗利データがシステム上に集計されます。
これにより、経営層へのスピーディーな報告が可能になるだけでなく、担当者はプレッシャーから解放され、本来注力すべき数字の分析や業務改善に時間を充てられるようになるのです。
図:クラウドシステムによる自動集計で、月末の締め作業から経営会議へのレポート提出までがスムーズに完結
4.バックオフィスを救うシステム選びのコツ
クラウドシステムの導入を決意しても、選び方を間違えると「かえって業務が煩雑になった」という悲劇を招きかねません。
実際に導入してから後悔しないためにも、実務を担うバックオフィス担当者の目線で、どのような基準でシステムを選定すれば失敗しないのか、絶対に外せない2つのコツを解説します。
4-1.営業部門と管理部門の連携のしやすさ
システム選びで最も陥りやすい失敗例が、「バックオフィスの集計作業が楽になる機能」ばかりを重視し、データの入力元となる「営業部門」の使い勝手を置き去りにしてしまうケースです。
どれほど集計機能が優れていても、最初のデータ入力が行われなければ意味がありません。
例えば入力画面が複雑なシステムを選んでしまうと、日々の業務に追われる営業担当者は入力を後回しにします。
結果として、月末月初にバックオフィスが「早く入力してください」と催促して回る羽目になり、これまでの苦労と何も変わりません。
だからこそ、導入前に無料トライアルやデモ画面を活用し、実際に営業担当者にも操作してもらう手順を踏んでください。
「契約期間や単価の登録が直感的にできるか」「外出先からでも簡単に確認できるか」をチェックしてもらいましょう。
管理部門だけでなく、営業部門も「手間が減る」と納得できるシステムを選ぶことで、全社的な入力が定着し、スムーズなデータ連携が実現するのです。
4-2.中小SES企業に最適な機能とコスト
もう一つの失敗例が、「大は小を兼ねる」と考えて多機能すぎるシステムを選んでしまうことです。
世の中には大手企業向けの素晴らしい統合基幹業務システム(ERP)がありますが、中小規模のSES企業がそのまま導入するのは危険です。
汎用的に作られた高額なシステムは、自社に合わせるための膨大なカスタマイズ費用がかかります。
さらに、多機能すぎるゆえに画面が複雑で、「マニュアルを見ないと操作できない」「使わない機能ボタンばかり」という状態に陥り、かえって日々の業務効率が落ちてしまいます。
中小のSES企業が選ぶべきは、「身の丈に合った機能とコスト」のシステムです。
具体的には、SES特有の「控除・超過計算(上下割・中割)」や「稼働時間と外注費の紐づけ」といった、私たちが本当に必要としている機能が最初から標準搭載されているシステムを探しましょう。
SESの商習慣に特化したシステムであれば、高額なカスタマイズ費用をかけず、導入したその日から直感的に使い始められます。
自社の規模感にフィットし、無理なく運用できるコストかを見極めることが、バックオフィスを救う最大の秘訣です。
まとめ:月次報告の自動化で業務改善を
ここまで、SESの月次報告における現状の課題から、経営層の意図、そしてクラウド一元管理の導入効果までを解説してきました。
毎月、月末月初に集中するデータ収集と集計の苦労は、決してバックオフィス担当者のスキル不足ではありません。
「データが各所に散在し、手作業で紐づけなければならない環境」に根本的な原因があるのです。
プロパーの売上計算に加え、SES特有の複雑な外注費計算までを限られた日数で正確にこなすことは、人の手だけでは限界があります。
データを一つのクラウドシステムに統合して一元管理することは、担当者を月末の過酷なプレッシャーから解放するだけでなく、経営層へのスピーディーな報告という全社的なメリットをもたらします。
月次報告の作成に疲弊している方は、ぜひ現状の「データ集め」のプロセスを見直し、自社の規模や業務に寄り添ったシステムの導入を前向きに検討してみてください。
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