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赤字発覚の遅れを防ぐ!SES案件のタイムラグ解消と早期可視化対策

「赤字発覚の遅れを防ぐ!SES案件のタイムラグ解消と早期可視化」と書かれたアイキャッチ画像。スプレッドシートの警告(赤字)を確認するSES営業マネージャーのイラスト。

「月次締めが終わってしばらく経ってから、実はこの案件が赤字だったと発覚した…」そんな苦い経験はありませんか?
SES事業において、締め作業から各案件の正確な粗利が確定するまでの「数週間のタイムラグ」は、赤字を静かに拡大させる最大の要因です。

本記事では、手遅れになる前に止血するための「プロジェクト別収支の迅速な可視化」と、営業マネージャーが即座に取るべき対策を解説します。
どんぶり勘定から脱却し、利益体質の組織を目指しましょう。

 

 

なぜSES案件は「突然の赤字」に陥るのか

利益が出ているはずの案件が、なぜか赤字に転落しており、しかも発覚がいつも遅れる。
多くのSES営業マネージャーを悩ませるこの「突然の赤字」は、単なる確認漏れではなく、SES特有の管理構造に起因しています。
ここでは、赤字発覚が遅れる3つの根本的な理由を紐解きます。

締め後から粗利確定まで数週間かかるタイムラグ

SES事業における最大のボトルネックは、プロジェクト収支を把握するまでの深刻なタイムラグです。
月末の締め作業が終わっても、エンジニアの稼働時間や経費精算、ビジネスパートナー(BP)企業からの請求書など、原価計算に必要な情報が各所からバラバラのタイミングで到着します。

これらをExcel等に集約し手作業で突き合わせを行うため、手元に各案件の正確な粗利データが届く頃には、すでに翌月の半ばを過ぎているケースが珍しくありません。

よくある失敗例として、一部のBPからの請求書到着が遅れただけで全体の原価計算がストップするケースが挙げられます。
正確な数字がわからないまま次月の稼働が進み、「気づいた時には手遅れで赤字が膨らんでいた」という事態は、この数週間の空白期間に発生するのです。

SES案件の収支確定に発生するタイムラグの図解。月末締め後、稼働時間・経費・BP請求書をExcelで手作業集計することで数日〜数週間の遅れが生じ、翌月半ばに手遅れの状態で赤字が発覚してしまうフローを示しています。図:手作業でのExcel集計が引き起こす、赤字発覚までのタイムラグ

 

残業増とBP外注費が遅れて発覚する利益圧迫

プロジェクト進行中の突発的な「見えないコスト」も赤字化の大きな要因です。

例えば、精算幅(上下割や中間割など)を設けない固定料金での契約や、準委任ではなく請負契約(受託開発)となっている案件において、想定以上に稼働が超過してしまうケースです。
クライアントからの売上は固定されているにもかかわらず、社員への残業代ばかりが膨らみ、利益を急激に圧迫します。

また、急な欠員補充で当初の想定より高単価なBPをアサインした場合も、売上単価と外注費のバランスが崩れて粗利率は低下します。

厄介なのは、これらのコスト増が日々の業務では可視化されず、前述の「数週間遅れの集計データ」で初めて発覚することです。
「こんなに稼働時間が跳ね上がっていたのか」「外注費が想定を大きく超えている」と、手遅れのタイミングで頭を抱える状況が常態化してしまいます。

営業側の「稼働率偏重」と採算意識のズレ

集計の遅れだけでなく、営業担当者の意識のズレも赤字案件を生む土壌となります。
多くの営業担当者は「エンジニアを待機させないこと(稼働率100%の維持)」を最優先に動く傾向があります。
稼働率の維持は事業の生命線ですが、待機を恐れるあまり、十分な粗利が見込めない低単価な案件で安易に妥協したり、高コストなBPを無理にアサインしたりといった判断を下しがちです。

「とにかくアサインを決めて売上を立てる」ことが目的化し、プロジェクト単位の採算意識が希薄になっているのです。

結果として、営業部門の売上目標や稼働人数は達成していても、事業部全体の利益目標には届きません。
マネージャーが事後に「なぜこの原価バランスで契約したのか」と指摘しても、契約開始後では容易に覆せないのが実情です。

 

赤字案件を「締め後速やか」に発見する収支可視化

前述したような「発覚の遅れ」を防ぐためには、月末の締め作業が終わった直後に、各案件の収支を正確に把握できる仕組みが不可欠です。
どんぶり勘定を脱却し、スピーディーに赤字案件を特定して次の一手を打つための具体的なステップを解説します。

プロジェクト単位で原価を紐づける仕組み

収支可視化の第一歩は、事業部全体の合算ではなく、「プロジェクト(案件)単位」で売上と原価を紐づけることです。
ここで非常に重要なのは、単なる「勤怠(出退勤時間)」ではなく、「プロジェクトごとの稼働時間」をベースに原価を計算することです。

SESの業務では、1人のエンジニアが1つの案件に100%アサインされるケースだけでなく、「A案件に0.5人月、B案件に0.5人月」と複数プロジェクトを兼務したり、自社業務を並行して行ったりすることも珍しくありません。
そのため、日々の総労働時間を「部門の費用」として一括処理するのではなく、誰が、どの案件に、何時間稼働したのかという「案件別の稼働時間」に対して人件費や外注費を按分して紐づける「プロジェクト別収支」の概念が、すべての出発点となります。

締め作業直後に稼働超過と収支を把握するフロー

プロジェクトごとの紐づけができたら、次は「情報鮮度」を上げるフローの構築です。
ここで目指すべきは、「月末の締め作業が完了した直後」に、人の手を介さず自動で各プロジェクトの収支が計算される状態です。

具体的には、月末にエンジニアの「プロジェクトごとの稼働時間(工数)」の入力が完了し、管理者がそれを承認したタイミングで、その稼働時間に応じた人件費や残業代の超過分が各案件の原価として即座に反映される仕組みを作ります。
同様に、BPからの請求金額も案件ごとの外注費として計上されるようにします。
これにより、「次月の半ばまで粗利がわからない」というタイムラグが解消され、営業マネージャーは締め日の数日後には「どの案件が利益を圧迫しているか」を正確に把握できるようになります。

脱Excelで集計タイムラグをゼロにする

この「締め直後のスピーディーな可視化」を実現するにあたり、最大の障壁となるのがExcelを使った手作業での集計です。
営業部門が持つ案件管理表、エンジニアから提出される案件別の稼働時間データ、経理の請求・支払いデータなど、複数部署にまたがるファイルをかき集め、1人月未満の細かい稼働按分まで手作業で計算する手法には限界があります。

手入力による転記ミスや計算漏れが起こりやすく、なにより「データ回収と複雑な按分計算」に数週間の時間がかかってしまいます。
このタイムラグをゼロにするためには、属人的なExcel管理から脱却し、案件情報から稼働時間、請求、収支計算までを一元管理できるシステムやクラウドツールへ移行することが最も確実です。
情報がひとつのシステムに集約されていれば、締め作業と同時に粗利計算が完了し、マネージャーはすぐに止血のための対策へ動くことが可能になります。

 

発覚後すぐ打つべき赤字案件への「対策」

締め後の集計で赤字や低粗利が発覚した際、最も重要なのは「いかに迅速に止血し、次月の損害を最小化するか」です。
どんぶり勘定のままでは有効な対策は打てませんが、可視化された正確なデータがあれば状況は変わります。
ここでは、具体的な数値データに基づき、営業マネージャーとして即座に取るべき3つのアクションを解説します。

根拠データに基づく顧客へのスコープ調整

赤字案件が発覚した際、まず確認すべきは「契約内容と実稼働の乖離」です。
集計された正確な案件別稼働時間とコストデータがあれば、クライアントに対して客観的な根拠を提示できます。
例えば、「仕様変更の要望が相次ぎ、基本設計フェーズの稼働が当初想定の1.5倍に膨らんでおり、このままでは予定した人員体制での継続が難しい」といった具体的な事実です。

単なる「利益が出ないから値上げしてほしい」という抽象的な交渉は強い反発を招きますが、「どの工程にどれだけの超過工数が発生しているか」というデータを元にすれば話は別です。
「このままでは品質の維持が困難になり、プロジェクト全体のリスクになる」と理を尽くして説明することで、クライアント側も納得しやすくなります。
論理的な交渉によって、単価の引き上げだけでなく、必須ではない機能要件のカットや納期の再延期など、双方にとって建設的な落とし所を見つけることが十分に可能です。

アサイン体制の見直しによる原価の最適化

プロジェクト途中で利益を回復させるための強力な手段が、アサイン体制の適正化です。
高単価なシニアエンジニアや熟練エンジニアが担当している業務の一部を、より低単価な若手や中堅へ段階的に引き継ぐことで、人件費という原価をコントロールします。
例えば、難易度の高い要件定義などの上流工程が終わり、定常的な開発・テストフェーズに入るタイミングなどは絶好の切り替えポイントです。

また、BPをアサインしている場合は、スキル要件を見極めた上で適正な単価のパートナーへの切り替えや、プロパー社員との構成比率を再調整します。

よくある失敗として、引き継ぎ期間中に新旧メンバーの稼働が重複し、一時的に原価が跳ね上がってさらに赤字が拡大するケースがあります。
この調整を行う際も、各案件の稼働時間データがあれば「いつ、どの業務の引き継ぎを行えば最も粗利を圧迫しないか」を精緻にシミュレーションできるため、エンジニアのモチベーションを損なうことなく着実に粗利を改善する配置転換が可能となります。

撤退ラインの明確化と勇気あるクローズ決断

マネージャーとして最も重要な判断の一つが、これ以上続けても改善が見込めない場合の「撤退(損切り)」です。
赤字が恒常化している案件に対して、「これまで頑張ってくれたエンジニアに申し訳ない」「ここで引いたら今までの苦労が無駄になる」といった感情や、サンクコスト(埋没費用)の呪縛に囚われ、リソースを投じ続けるのは事業部全体にとって大きなリスクです。

これを防ぐためには、「粗利率が〇%を下回ったら契約更新を行わない」「スコープ調整の交渉が決裂した場合は次回の更新タイミングで撤退する」といった明確な損切りルールを事前に設定しておくことが重要です。
締め後に正確な収支データが得られれば、属人的な感情に流されず、マネージャーはこの厳しい判断を即座に下すことができます。

赤字を垂れ流す案件を勇気を持って整理し、その分浮いたエンジニアのリソースを利益率の高い優良案件に再投入することこそが、組織全体の利益体質を強化する最短ルートとなります。

 

営業チーム全体に採算意識を根付かせる

赤字案件を減らすには、マネージャー一人が数字を見て焦る状況から脱却する必要があります。
どれほど収支を可視化しても、実際に顧客と交渉しアサインを決める営業担当者に「採算意識」がなければ根本解決には至りません。
ここではチーム全体の意識を変革するマネジメント手法を解説します。

評価指標を「売上」から「粗利」へシフト

営業担当者の行動を変える確実な方法は、評価指標(KPI)の変更です。
多くのSES企業では、個人の目標を「売上高」や「稼働人数」に置いていますが、これでは「薄利でもアサインを決めて目標人数を達成する」行動に走りやすくなります。
「利益を意識しろ」と口頭で伝えるだけでは不十分です。

そこで、評価基準を「プロジェクトの粗利額」や「粗利率」へシフトさせます。
「売上は達成したが粗利率が基準未達なら評価は据え置き」「稼働人数は少なくても、高い粗利を出した担当者を高く評価する」といった制度設計です。
評価と直結させることで、営業担当者は安易な値引きや高コストなBPのアサインを踏みとどまり、利益から逆算して案件を組むようになります。

比較項目 従来の評価指標
(売上高・稼働率重視)
新しい評価指標
(プロジェクト粗利重視)
営業の最優先事項 エンジニアを待機させないこと
(稼働率100%)
案件ごとの適正な利益(粗利)を
確保すること
アサインの傾向 利益が薄くても、
とにかく空いている人材をねじ込む
原価(人件費・外注費)と単価の
バランスを計算して配置する
単価交渉のスタンス 案件を獲得するためなら、
顧客の安易な値下げ要求にも応じる
赤字リスクがあれば、根拠データを示して
単価維持・アップを交渉する
高コストなBPの活用 欠員が出れば、採算度外視で
高単価なBPでも即座にアサインする
粗利率が基準を下回る場合は、
体制の再構築や見送りを検討する
撤退の判断基準 現場のエンジニアが限界を迎えるか、
顧客から切られるまで続ける
「粗利率〇%未満」などの明確な
撤退ラインに基づき早期に損切りする

 

可視化データを用いた定期ミーティング

指標変更後は、実際の数字を使った定期的なコミュニケーションが不可欠です。
月末締め直後の「正確な収支データ」をマネージャーが抱え込まず、次月初めの営業会議でチーム全員にオープンにする仕組みを作ります。

ここで赤字を出した担当者を個別で責め立てるのは逆効果であり、不都合な情報を隠す原因になります。
そうではなく、収支一覧を画面共有し「今月、粗利率が危険水域に入っている案件はどれか」「なぜ原価が膨らんだのか」をチーム全体の課題としてフラットに議論します。
他人の案件のリアルな数字の推移を見ることで、他の担当者にも「自分も契約前の見積もりを厳格にしよう」という学習の機会が生まれます。

赤字事例のノウハウ化とチーム内での共有

どんなに注意しても、想定外の事態で赤字化する案件は発生します。
重要なのは、その失敗を個人のミスで終わらせず、組織の資産へ昇華させることです。
赤字発覚時に「なぜ赤字になったか(原因)」と「どう止血したか(対策)」をケーススタディとして部内で共有する文化を定着させましょう。

例えば「固定料金の契約で要件定義が曖昧で稼働が大きく膨らんだが、客観的な稼働時間データを提示してスコープ調整を行い、追加費用を獲得できた」というリカバリーの事例は、他の担当者にとって有益な交渉術です。
こうしたノウハウを共有することで、チーム全体の「地雷案件を見抜く力」や「トラブル時の交渉力」が底上げされ、結果的に組織全体の赤字発生率を大きく引き下げられます。

 

プロジェクト収支可視化がもたらす未来

ここまでは、赤字案件を迅速に発見し対策を打つためのアプローチを解説してきました。
正しいデータに基づく管理体制の構築は、単なるコスト削減以上の価値を組織にもたらします。
ここでは収支可視化が実現した先にある、マネージャーと企業全体へのポジティブな変化をまとめます。

営業マネージャーの精神的負担を軽減

これまでは、各部署からのデータ集計が終わるまで「どの案件が赤字か分からない」という不安と戦う必要がありました。
しかし、稼働時間や経費が正確に紐づき、締め直後に収支が可視化される仕組みが整えば、精神的なプレッシャーから解放されます。

「結果が出てからの火消し」という後手後手の対応がなくなり、客観的なデータに基づき自信を持って交渉や調整に臨めるようになります。
トラブル対応に奪われていた時間を、新規案件の獲得や営業戦略の立案といった、マネージャー本来の前向きな業務へシフトさせることが可能になります。

迅速な経営判断で利益体質のSES企業へ

迅速な止血対応と営業担当者の採算意識の向上は、会社全体の利益率向上に直結します。
赤字の早期発見と対策が定着すれば、「売上は伸びているのに利益が残らない」というジレンマから抜け出し、安定した利益体質へと変革できます。

健全な管理によって生み出された利益は、エンジニアの給与アップや教育研修、採用強化へ還元可能です。
待遇改善が定着率を高め、優秀な人材が育つことでクライアントへの提供価値が向上し、さらに単価が上がるという好循環が生まれます。
プロジェクト別収支の可視化は、企業の未来を切り拓く強力な経営基盤となります。

 

まとめ:収支の可視化で健全なSES経営を実現する

本記事では、SES企業における「突然の赤字」を防ぐためのプロジェクト別収支の可視化と、具体的な対策について解説しました。

「締め後から粗利確定までのタイムラグ」は、赤字を確実に拡大させる最大の要因です。
この情報遅延を防ぎ、案件ごとの正確な稼働時間に基づく原価管理を徹底することが、営業マネージャーが取るべき第一歩となります。

手作業でのExcel集計に限界を感じている場合は、締め直後にスピーディーな収支可視化を実現するシステムの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
自社に合った仕組みを構築し、利益体質の組織づくりを進めていきましょう。

 

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