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なぜ売上は伸びているのに利益が出ない?SES経営を蝕む待機と事務コスト

SES経営における待機コストと事務コストを削減し、利益率改善を図るデータ管理のイメージイラスト

SES事業において、組織の拡大と収益性の維持を両立させることは容易ではありません。
社員が増えるにつれ、それまでは見えていたはずの現場の採算や事務工数の膨張が不透明になり、気づかぬうちに「利益が漏れ出す体質」に陥ってしまうケースが多々あります。

持続可能な成長を実現するためには、場当たり的な案件獲得や管理を卒業し、確固たる収益ロジックに基づいた経営判断が求められます。
本記事では、高収益なSES企業へと変貌を遂げるための具体的な指針を、数値目標の設定から実務レベルの効率化まで網羅的に解説します。
まずはその第一歩として、私たちが目指すべき「健全な経営の指標」を明らかにしていきましょう。

 

 

SES業界における利益率の適正な目安

自社の決算や月次レポートを見た際、「売上高は右肩上がりで成長しているのに、手元に残る営業利益が想定よりも少ない」と頭を抱える経営者は少なくありません。
とくにエンジニア数が50〜100名規模へ拡大していくフェーズでは、勢い任せの売上至上主義からの脱却が求められます。
属人的などんぶり勘定から抜け出し、自社の現状を客観的な数字で評価して経営判断の軸とするための「適正な利益率の目安」について、改めて確認していきましょう。

営業利益率「10%」がひとつの壁

SES業界(中堅企業規模)において、安定した経営基盤と将来への投資余力を持っている優良企業の多くは、「営業利益率10%以上」をひとつの基準としてクリアしています。

もし営業利益率が5%を下回っている場合、経営の安定性に黄信号が灯っていると認識すべきです。
この水準では、クラウドインフラやモダンな開発言語など高単価案件を獲得するための教育投資や、優秀な人材の採用活動、あるいは不況時に備える内部留保を十分に確保できなくなります。

ここでよくある失敗例は、「とにかくエンジニアの頭数を揃えてアサインすれば儲かる」と錯覚し、売上規模の拡大のみを追求してしまうケースです。
利益率が低いまま組織が肥大化すると、プロジェクトの切れ目によるわずかな待機(稼働割れ)の発生や、一時的な市況悪化だけで、一気に単月赤字へと転落する非常に脆い財務体質に陥ります。

自社が「10%」の壁に対して現在どの位置にあるのか。
年次だけでなく月次決算からシビアに数値をモニタリングし、目標に届かない場合は「どこから利益が漏れているのか」を即座に特定する体制を構築することが利益体質改善の第一歩です。

粗利率と営業利益率の違いに注意

社内で利益率を議論する際、経営陣と現場のマネージャー間で「粗利率」と「営業利益率」が混同されていると、経営課題の本質を見誤る危険性があります。

SESにおける粗利とは、「エンジニアの月額請求単価から、給与や社会保険料、交通費などの直接原価を差し引いた金額」です。
営業担当者が「単価60万円・給与40万円で粗利率約33%の優秀な案件です」と報告してきても、最終的に会社に残る利益はこれではありません。

この粗利から、さらに現場に出ない営業やバックオフィス部門の人件費、オフィスの家賃、各種システム利用料、採用広告費などの「販管費(販売費及び一般管理費)」を差し引いたものが「営業利益となります。

経営層が陥りがちな罠は、「現場ごとの粗利率は常に30%を維持しているはずなのに、期末に蓋を開けてみたら営業利益率が3%しか残っていなかった」という事態です。
組織拡大に伴う事務工数の増加による間接コストの膨張や、待機エンジニアの固定給(売上ゼロで原価のみ垂れ流す状況)が、現場の稼いだ利益を裏で食いつぶしているのが主な原因です。

経営層が真にメスを入れるべきは、個別の単価交渉にとどまらず、会社全体の見えないコスト構造を可視化し、営業利益率を根本から最適化していくことなのです。

 

SESの利益率を押し下げる3大要因

売上は順調に伸びているのに営業利益が残らない理由はどこにあるのでしょうか。
決算書を圧迫する要因を深掘りすると、主に以下の「3つの構造的な課題」が会社の利益を確実に削り取っていることが見えてきます。

エンジニアの稼働割れと待機コスト

利益率を最も押し下げるのが、プロジェクト間の「待機(稼働割れ)」です。

SESは稼働時間を販売するビジネスであり、待機中も給与などの固定費(原価)は発生し続けます。
例えば月給40万円のエンジニアが1ヶ月待機すると、売上がゼロになるだけでなく、社会保険料を含めた額がそのまま赤字として流出します。
これは、粗利10万円のエンジニアが4〜5人で1ヶ月かけて稼ぎ出した利益を、たった1人で食いつぶしてしまう計算になります。

【よくある失敗例と経営判断の基準】
営業が「より自社の利益幅が大きい高単価案件」を狙うあまり、商談を吟味しすぎてアサインが1〜2ヶ月遅れるケースです。

当然、キャリアを無視した「スキルアンマッチな案件」への無理なアサインは、エンジニアの離職を招くため論外です。
しかし経営として避けるべき財務的損失は「高利益を狙いすぎた結果生じる空き期間」です。
適正なスキルマッチの範囲内であれば、月単価が数万円下がっても待機期間をゼロにした方が、通年の利益額は高くなります。

「待機か、妥協か」の二択に陥る根本原因は案件探しの遅れにあります。
これを防ぐため、全エンジニアのプロジェクト終了時期を一元管理し、終了1.5ヶ月前から次の案件への「シームレスな移行準備」をルーチン化する手順の徹底が不可欠です。

待機エンジニア1人のコストが、稼働エンジニア約5人分の利益を相殺する関係を示した天秤の図解

組織拡大に伴うバックオフィス肥大化

従業員が50名規模を超える過程で、目に見えて利益を圧迫し始めるのが「バックオフィスの事務コスト(販管費)」です。

SES事業は、毎月の請求・支払業務が極めて複雑です。
特に準委任契約における「140h-180h」といった精算幅ルールに基づく超過・控除計算、さらに上位会社と下位会社(パートナー)で精算条件が異なる「上下割」の管理などは、エンジニアごとに個別条件が設定されます。
創業期からの表計算ソフトによるアナログ管理は、50名を超えたあたりで処理の限界を迎え、人為的な計算ミスや確認作業の激増を招きます。

【よくある失敗例と改善の手順】
「事務が回らないから」という理由だけで、経理や総務の正社員を安易に増員してしまうケースです。
これは一度増やすと削減が難しい固定費を増大させ、営業利益率を恒常的に押し下げる要因となります。
人員を増やす前に、まずは現在の「請求・支払の突合業務」や「勤務表回収」に誰が何時間費やしているかを可視化してください。
その上で、手作業を前提とした属人的な業務フローを、システムによる自動化を前提とした「標準化されたフロー」へ再設計する手順を優先すべきです。

多重下請けによるマージン低下

SES業界特有の「商流の深さ」も、自社の利益率の天井を低くしてしまう決定的な要因です。

日本のIT業界は多重下請け構造になっており、商流が1階層深くなるごとに、上位企業によって10%〜15%程度のマージンが引かれます。
本来、発注元から月額100万円の予算が出ているプロジェクトでも、自社が四次請けであれば手元に入る単価は60~70万円程度まで目減りします。
これでは優秀なエンジニアを抱えていても、会社としての利益幅は極めて薄くなります。

【よくある失敗例と商流改善のアプローチ】
自社の新規開拓力が弱く、付き合いの長いパートナー企業からの「案件情報の横流し」に依存しきっている状態です。
これは短期的な稼働率は維持できても、中長期的な利益体質の改善には繋がりません。
商流を上げるためには、エンジニアのスキルシートを単なる経歴羅列ではなく「エンド企業の課題解決」に直結する見せ方へブラッシュアップする仕組み作りが必要です。
同時に、プライムベンダーや一次請け企業へ直接パイプを持つ営業人材の育成や、特定技術領域における専門性の提示など、戦略的な案件獲得ルートの開拓へ投資をシフトする判断が求められます。

 

待機コストを削減し稼働率を上げる方法

利益率を押し下げる最大の要因である「待機(稼働割れ)」を防ぐためには、担当営業の個人の頑張りや運に依存するのではなく、会社組織として「稼働率を極限まで高め続ける仕組み」を構築しなければなりません。
待機コストを根本から削減し、高単価かつ安定した稼働を実現するための2つのアプローチについて解説します。

営業力強化と案件獲得ルートの開拓

待機ゼロを継続するには、特定のパートナー企業からの「案件情報の横流し」に依存した受け身の営業スタイルから脱却し、商流の浅い案件を自ら取りに行く「攻めの営業力」の強化が急務です。

【具体的な手順とアプローチ】
まずは自社の強みとなる技術領域や得意な業界を再定義し、一次請け(プライムベンダー)やエンド企業を直接ターゲットとした新規アプローチリストを作成します。
提案時は単なる「人員の提供」ではなく、「過去の類似プロジェクトでどう課題を解決したか」という実績を交えた提案型営業へシフトしてください。
並行して、稼働中のエンジニアから「別プロジェクトでの増員予定」や「次期システムの刷新計画」などの一次情報を吸い上げ、他社よりいち早く営業が提案に動く現場連携の体制を築くことも非常に有効です。
現場のエンジニアを最大の「情報源」として機能させる仕組み作りが鍵となります。

【よくある失敗例】
営業担当の評価軸を「月間の面談設定数」などの行動量だけに置いてしまうケースです。
手っ取り早く面談が組める商流の深い(多層下請けの)案件ばかりを集めてしまい、結果的に単価が上がらず、エンジニアのモチベーション低下による早期離職や再待機という悪循環を招きます。
目先の面談数よりも、案件の質(商流の浅さや直請け比率)を高く評価する人事評価体制への切り替えが必要です。

需要に合わせた継続的な教育投資

攻めの営業力と同等に重要なのが、市場のトレンドに合わせたエンジニアの「スキルチェンジ」を会社主導で推進する教育体制です。
扱う技術が古いままでは、どれほど営業が動いてもアサインできる案件自体が枯渇し、待機リスクが上がります。

【具体的な手順とアプローチ】
需要が急増しているクラウドインフラ(AWS、Azureなど)やモダンな開発言語(Go、Reactなど)へのシフトチェンジを戦略的に進めます。
ただ研修を受けさせるだけでなく、待機期間や稼働の合間をポジティブに捉え、会社負担での外部研修受講や資格取得支援制度(受験料負担や合格時の報奨金)を整備してください。
さらに、すでにモダン技術で稼働しているトップエンジニアをメンターに据え、定期的な社内勉強会を実施するほか、自社内でのモックアップ開発を通じて「実務に近い経験」を積ませることで、営業が単価交渉しやすい武器を持たせることが重要です。

【よくある失敗例】
スキルアップを「個人の自己研鑽(プライベートな努力)」に丸投げしてしまうケースです。
業務時間外での個人の意欲に依存していては、組織全体の底上げには繋がりません。
経営層が「教育は未来の高稼働・高単価案件を獲得するための投資(原価)」と明確に位置づけ、業務時間内での学習枠の確保や教育環境への予算投下を決断できなければ、いつまでも技術の陳腐化による待機リスクに怯え続けることになります。

 

バックオフィスの効率化とコスト削減

利益率の改善と聞くと、多くの経営者は「単価アップ」や「原価低減」ばかりに目を向けがちです。
しかし、営業利益を確実に残すための「最短ルート」は、実は社内のバックオフィスに潜む過剰な事務工数と管理の甘さを排除することにあります。
組織が拡大しても利益が出る体質を作るための、守りの戦略を深掘りします。

どんぶり勘定・アナログ管理からの脱却

「うちは黒字のはずだが、なぜか手元にキャッシュが残らない」と感じる経営者の多くが陥るのが、表計算ソフトの乱立による「どんぶり勘定」です。
エンジニアが十数名規模までは、経営者の頭の中で採算を把握できていたかもしれません。
しかし、30名、50名と規模が広がるにつれ、アナログな管理は必ず限界を迎えます。

【管理限界が招くリスク】
最大の問題は、案件ごとの正確な採算、いわゆる「個別原価計算」がリアルタイムで行えないことです。
エンジニアの給与、社会保険料、福利厚生、さらには獲得にかかった採用費や営業経費。
これらを案件単価と正確に突合できていないと、一見稼働しているように見えても、販管費を差し引くと赤字、あるいは微益しか出ていない「不採算案件」に気づくのが遅れます。
この遅れが会社全体の利益率を静かに蝕みます。

【よくある失敗例】
各営業担当が自分専用のExcelで案件情報を管理し、経理はそれとは別のスプレッドシートで入金を管理しているような「情報の断絶」が起きているケースです。
最新の契約条件や精算ルールが全社で共有されていないため、決算期になって初めて「この案件、実は赤字だったのか」と驚くことになります。
経営判断を下すためのデータが各個人のPCに埋もれている状態は、経営における最大の不確実性といえます。

請求・支払業務のシステム化の重要性

SES事業のバックオフィスを複雑にしている元凶は、業界特有の「請求・支払い実務」の煩雑さにあります。
この実務を手作業で行い続けることは、単にミスを誘発するだけでなく、莫大な「見えない人件費」をドブに捨てているのと同じです。

【SES特有の複雑な実務とは】
準委任契約における「140h-180h」といった精算幅ルールは現場ごとに異なります。
さらに発注元とは「上下割」で精算し、下位会社(パートナー企業)とはまた別の基準で精算するといった、二重・三重の計算が毎月発生します。
これらを毎月初、バラバラな形式の勤務表を見ながら事務スタッフが手入力で計算し、請求書を発行し突き合わせる作業には、膨大な時間が奪われています。

【具体的な改善の手順】
この状況を打破する唯一の方法は、業務のクラウド化・システム化です。

  1. ❶情報の集約: 契約内容(単価、精算条件、期間)をすべて一箇所に集約し、営業・経理が同じデータを見られるようにします。
  2. ❷自動計算の導入: 稼働時間を入力するだけで、契約に基づいた超過・控除額が自動算出される仕組みを構築します。
  3. ❸一括発行: 計算結果からワンクリックで請求書を発行し、パートナーへの支払いデータも自動生成します。

 

【システム化がもたらす即効性】
ここをシステム化することは、最も確実で即効性のある利益率改善策(販管費の削減)です。
例えば、事務スタッフ2名がかりで5日かけていた月次処理が、システム導入により1名で1日に短縮できれば、削減された人件費はそのまま営業利益に直結します。
また、計算ミスによる返金対応や再発行等の業務がゼロになることで、バックオフィスチームはより戦略的な財務管理や採用支援へリソースをシフトできるようになります。
「どんぶり勘定」から卒業しデジタルな管理体制を築くことが、高収益企業への脱皮に向けた不可欠なステップです。

業務プロセス アナログ管理(Excel等の表計算) クラウドシステム化(導入後)
契約・案件管理 営業ごとの個別Excelで属人的に管理 全社共通のデータベースで一元管理
超過・控除の計算 現場ごとに異なる精算幅(上下割など)を
目視と手作業で計算
稼働時間を入力するだけで、
契約条件に基づき自動算出
請求書・支払明細 フォーマットへ手入力。
金額の転記ミスや目視チェックの手間が発生
自動計算されたデータから
ワンクリックで一括発行
経営データ可視化 月次締めが終わっても全体の採算が
わかるようになるまで時間がかかる
月次締め後、個別原価・利益率が
可視化され即座に判断可能
想定される事務工数 担当者数名がかりで毎月数日を消費 担当者1名で数時間〜1日程度に
大幅短縮

 

まとめ:利益率は「現場の仕組み」と「バックオフィスの標準化」で決まる

SES事業における利益率の低下は、決して避けられない業界の宿命ではありません。
「高利益を狙いすぎた結果の待機発生」や「多重下請け構造への甘んじ」、そして「表計算ソフトの乱立によるどんぶり勘定」といった構造的な課題を一つずつ紐解き、解決策を仕組み化することで確実な改善が可能です。

「エンジニアの稼働を途切れさせないための前倒しの営業・教育体制」と、「バックオフィスの事務コストを最小化するシステム化」。
この両輪を回すことこそが、利益率10%の壁を突破する鍵です。
売上規模の拡大から「利益体質への転換」へ。
本記事でご紹介した具体策を、ぜひ貴社の経営改革にお役立てください。

 

 

バックオフィスの仕組み化を実現する『事務SOL』

SES特有の複雑な請求・支払業務のシステム化には、業界の商習慣に特化したクラウドERP『事務SOL(ジムソル)』をご活用ください。

準委任契約の精算幅(上下割など)の自動計算から、請求書や支払明細の発行まで、毎月の煩雑な事務作業を大幅に削減します。
属人的などんぶり勘定から脱却し、個別原価管理によって「見えない赤字案件」を未然に防ぎます。

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事務SOLはセキュリティの観点から、以下のブラウザでご利用いただけます。
・最新版のGoogle Chrome(Android版を含む)
・最新版のMicrosoft Edge
上記ブラウザがご利用できるOSであれば、WindowsでもMacでも問題なくご利用いただけます。
なお、事務SOLの推奨ブラウザ(最も快適にご利用いただけるブラウザ)は最新版のGoogle Chromeです。

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