工数削減は中小企業にとって重要な課題のひとつです。限られた人材とコストで最大限の成果を出すためには、業務の効率化が欠かせません。
工数削減を実現できれば、無駄な作業を省けるほか、生産性を高めることが可能です。この記事では、工数削減の必要性やメリット、実践方法について詳しく解説します。
工数削減を検討している方は、ぜひ参考にしてみてください。
工数削減とは?
工数削減とは、業務を終えるまでに必要な作業時間と人員をカットすることです。具体的には、作業工程の見直しや自動化、担当者の適正配置などによって実現できます。
工数削減の目的は、コストを削減することや生産性を高めていくこと、従業員にかかる負担を減らすことなどです。特に中小企業では限られた経営資源を有効活用する必要があるため、工数削減は重要な経営課題のひとつといえます。
工数削減が必要とされる背景
近年では、中小企業を取り巻く環境の厳しさが増しています。「2025年の崖」と呼ばれるIT人材不足や、少子高齢化による労働力人口の減少など、さまざまな課題に直面している企業が多くなっています。
こうした状況下で競争力を維持するためには、業務の効率化が必要不可欠です。工数削減を実現させることで、無駄な作業を省けるほか、限られた人材を有効活用できます。
ここでは、工数削減が必要とされる背景となる「2025年の崖」と労働力人口の減少について詳しく解説します。
「2025年の崖」
「2025年の崖」とは、国内のITシステムの多くが老朽化し、保守・運用の担い手不足が深刻化すると予測される2025年ごろの状況を指します。
IT人材の確保が難しくなることは、中小企業のデジタル化や業務効率化が停滞する恐れがあります。こうした事態を避けるためには、早めの対策を採らねばなりません。
工数削減を実現できれば、IT人材の負担を減らせるほか、限られた人材を有効活用することが可能になります。
労働力人口の減少
日本では少子高齢化が進み、労働力人口が減少傾向にあります。特に中小企業では人材確保が難しく、人手不足に悩む企業が多いのが実情です。限られた人材でいかに生産性を上げるかが、中小企業にとって重要な課題となっています。
労働力人口減少の影響を食い止めるためには、工数削減によって一人ひとりの作業負担を減らすことが重要です。さらに効率的な業務運営を成功させることもポイントになります。
工数削減を実施するメリット
企業が工数削減に取り組むメリットは大きく分けて3つあります。コストの削減をはじめ、生産性を高めること、従業員の負担を軽減することです。
厳しい経営環境の中で競争力を高めるためには、これらのメリットを追求しなければなりません。工数削減によって作業を効率化し、限られた経営資源を有効活用することこそが、企業の持続的な成長へとつながります。
コストの削減
工数削減で得られるメリットは、コストをカットできることです。作業にかかる時間を短縮し、人員を最適化することで、人件費や光熱費などの経費を抑えられます。
特に中小企業では資金や人材に限りがあるため、コスト削減は重要な経営課題のひとつです。工数削減によって資金を浮かせれば、新たな投資に回すことが可能になるほか、事業の成長につなげられるでしょう。
生産性の向上
工数削減を実施すると、業務の効率化を進行させることが可能です。結果、生産性の向上を期待できるため、企業にとっては大きなメリットになります。
不要な作業をカットしていくことは、一人ひとりが付加価値の高い仕事に集中するために欠かせないことです。生産性が上がれば、同じ人数でもより多くの成果を上げられるようになります。
生産性の向上は、企業にとって競争力を高めるための重要なポイントです。工数削減によって生産性を高め、限られた経営資源を最大限に活用することが求められます。
従業員の負担軽減
工数削減のメリットは、従業員の負担を軽減できることです。無駄な作業が減れば、一人ひとりの作業量を適正化できます。また、作業の自動化や効率化が進めば、従業員はクリエイティブな仕事により多くの時間を割けるようになるでしょう。
特に中小企業では、人材の定着率を高めることも重要な課題のひとつです。工数削減によって従業員の満足度を高め、働きやすい職場環境を整備することが必要になります。
工数を削減するための手順
工数削減を成功させるには、適切な手順を踏むことが重要です。まずは現状の工数を正確に把握し、削減すべき業務の優先順位を決定することからスタートしましょう。
その上で、後述するECRS(イクルス)の原則に基づいて具体的な削減案を検討し、担当者と作業範囲を設定します。最後に削減案を実行し、結果を評価・改善するサイクルを回します。工数削減は地道に取り組んでいくことが重要です。
工数管理により現状の把握をする
工数削減を実現させるための第一歩は、現状の工数を正確に把握することです。どの業務にどれだけの時間が費やされているのか、データに基づいて可視化していきましょう。
データの可視化は工数管理システムの導入が効果的です。タイムカードや業務日報などから作業時間を集計し、部署別・担当者別・業務別などの切り口で分析します。ありとあらゆる過程をチェックすれば、無駄な作業や改善の余地がある業務が浮き彫りになります。
例えば、特定の業務に時間がかかりすぎていたり、同じような作業が複数の部署で行われていたりする場合は、見直しが必要といえます。また、作業時間のばらつきが大きい場合は、担当者間のスキル差が原因の可能性もあります。
工数管理は客観的な現状把握に欠かせないプロセスです。データを活用しながら、業務の問題点や改善のポイントを洗い出すことが、工数削減の出発点となります。
削減すべき業務の優先順位を決定する
現状の工数を把握できたら、次は削減すべき業務の優先順位を決定します。限られたリソースのなかで工数削減を進めるためには、何よりもメリハリが重要です。
優先順位を決める際は、業務の重要度と改善による効果の大きさを基準に判断します。例えば、手作業が多く自動化の余地が大きい業務や、複数の部署で重複している作業などが、優先的に改善すべき対象になるでしょう。
一方で、業務の停滞につながりかねない作業や他の業務に与える影響が大きい作業は、慎重に検討する必要があります。特に現場の意見を十分に聞くことも大切です。実際に業務を行っている従業員の声に耳を傾けることで、改善のアイデアや課題が見えてくることがあります。
また、工数削減の目的や意義を社内で共有し、全員が一丸となって取り組む体制を整えることも重要です。優先順位の決定は、工数削減の方向性を定める重要なステップです。費用対効果を見極めながら、着実に成果を上げていくことが求められます。
ECRS(イクルス)の原則で削減案を決める
削減すべき業務が決まったら、具体的な削減案を検討します。ここで重要になるのが、ECRS(イクルス)の原則に基づいて進めることです。
ECRSとは、Eliminate(排除)、Combine(結合と分離)、Rearrange(入替えと代替え)、Simplify(簡素化)の頭文字を取ったものです。
まずは不要な作業を排除することから始め、無駄な工程や必要性の低い業務を思い切ってカットします。次に作業内容について検討します。別々に行われている作業を一本化、あるいは複雑な作業は細分化することで、効率化を図ることが可能です。
また、作業の順序を入れ替えたり、手順を別のものに変更したりすることで、無駄な待ち時間を削減できる可能性もあります。そして、複雑な作業はできる限り簡素化を目指すことが重要です。手順の標準化や、ツールの活用などで作業時間の短縮につなげましょう。
ECRSの原則は業務の効率化に役立つ考え方です。現場の実態を踏まえながら、柔軟に適用していきましょう。また、削減案の検討は工数削減の具体的な内容を決める上で重要です。現場の意見を取り入れながら、実行可能な案を練り上げていきましょう。
担当者と作業範囲を設定する
削減案が固まったら、次は担当者と作業範囲を明らかにして設定します。工数削減を着実に進めるためには、誰が何をどこまでやるのか、責任の所在を明らかにすることが重要です。
まずは削減案の実行に必要な人員を確保します。社内の適任者を選定するだけでなく、必要に応じて外部リソースの活用も検討しましょう。
担当者が決まったら、一人ひとりが作業できる範囲を具体的に設定します。業務の開始から完了までの流れを整理し、誰がどの工程を担当するのかをしっかりと決定してください。ポイントとしては、担当者の能力や経験を考慮し、無理のない範囲で作業を割り当てることです。
また、作業する範囲を設定する際は、業務の標準化も重要になります。手順やルールを明確にすることで、担当者間のバラつきを防ぎ、品質の維持につなげることが可能です。
担当者と作業範囲の設定は、工数削減の実行体制を整える上で欠かせないステップになります。関係者への説明を徹底的に行い、理解と協力を得ながら着実に進めていきましょう。
削減案の実行と結果の評価をする
最後は削減案を実行に移すステップです。ただし、実行して終わりではありません。工数削減の取り組みを継続的に改善していくためには、結果の評価を行う必要があります。
まずは削減案の効果を定量的に測定します。作業時間の短縮率やコストの削減額など、数値で示すことが重要です。目標との差異を分析し、改善の余地があれば速やかに対応しましょう。
また、実際に働く従業員の声をヒアリングすることも重要です。現場の従業員から率直な意見を聞き、削減案の良し悪しを判断します。「作業がしやすくなった」「ミスが減った」といったポジティブな声があれば、削減案の有効性が裏付けられるでしょう。
一方で「手順が複雑になった」「コミュニケーションが取りづらくなった」といったネガティブな声があれば、改善が必要です。
評価の結果を踏まえて、削減案の修正や新たな施策の立案につなげていきましょう。PDCAサイクルを回しながら、工数削減の取り組みを継続的にブラッシュアップすることが重要なポイントです。
削減案の実行と結果の評価は、工数削減の成果を左右する重要なプロセスです。地道な改善の積み重ねが、企業の生産性向上と持続的成長につながるでしょう。
工数削減を成功させるための4つのポイント
中小企業が工数削減を成し遂げるためには、4つの重要なポイントを押さえる必要があります。
社内での実施体制を整え共有し、一丸となって取り組む社内の雰囲気づくりを実施すること、影響の少ない範囲から着手すること、追加の作業も検討すること、適切なツールを活用することは必要不可欠です。
ここでは、工数削減の実現に欠かせない4つのポイントについて詳しく解説します。
社内で工数削減の実施を共有する
工数削減を成し遂げるためには、社内での理解と協力が必要です。トップダウンで進めるのではなく、現場の従業員を巻き込みながら全社一丸となって取り組む体制を整えていく必要があります。
まずは、経営層から工数削減の必要性や目的を明確にしましょう。コスト削減や生産性向上といった会社の方針と、工数削減がどう結びつくのかを丁寧に説明し、従業員の理解を得ることが大切です。
また、現場の声に耳を傾け、アイデアや懸念を吸収することも欠かせません。工数削減の具体的な進め方や従業員への影響などについて、オープンに議論できる場を設けましょう。社内報や内部ネットワークなどを活用し、取り組みの進捗や成果を定期的に共有すると効果的です。
工数削減を成し遂げるためには、従業員一人ひとりが工数削減の当事者意識を持ち、自発的に行動できる環境を整える必要があります。社内での実施体制づくりは、工数を削減するための重要な土台になるでしょう。
影響の少ない範囲から実施する
工数削減は、業務の流れや社内の体制に大きな変化をもたらす可能性があります。いきなり企業全体で取り組む流れで進行させてしまうと、混乱を招いたり、従業員の反発を買ったりするリスクが高くなるので注意が必要です。
まずは影響の少ない範囲から着手し、徐々に取り組みを拡大していきましょう。例えば、特定の部署や業務から工数削減を始めるのもひとつの方法です。比較的規模の小さい部署や改善の余地が大きい業務を選んで、試験的に実施してみましょう。
小さな成功体験を積み重ねることは、社内の理解と協力を得ることにつながります。さらに企業全体での取り組みにつなげやすくなります。
工数削減の対象となる業務や工程を選ぶ際は、業務全体への影響を考慮することも大切です。他の業務に大きな影響を与えるような変更は、慎重に検討する必要があります。リスクを最小限に抑えながら、着実に成果を上げていくことがポイントです。
追加の作業も検討する
工数削減は無駄な作業を省くことが目的ですが、場合によっては追加の作業が必要になることもあります。
例えば、手作業の多い業務を自動化するために、システム開発が必要になるかもしれません。あるいは業務の標準化を進めるために、マニュアルの作成や従業員教育が求められることもあるでしょう。
このような追加の作業は一見すると工数削減の趣旨に反するように見えますが、長期的な視点で見れば業務の効率化につながる重要な投資といえます。追加作業が必要な場合は、その目的や効果を明確にし、従業員の理解を得ることが大切です。
また、追加の作業に必要なリソースを確保し、計画的に進めることも重要です。工数削減は単に作業を減らすだけではなく、業務全体の最適化を図る取り組みだと捉える必要があります。
ツールの導入を検討する
工数削減を効果的に進めるためには、適切なツールの活用が欠かせません。工数を管理できるシステムや業務を自動化できるツールなどを導入することで、作業時間の可視化や業務の効率化を加速させることができます。
例えば、工数を管理できるシステムを使うことで各業務にかかる時間を正確に把握し、ボトルネックを特定することが可能です。定型的な作業を自動化するためのツールを使用すれば、事務作業の自動化や在庫管理作業の効率化を図れます。
こうしたツールの活用は、人的ミスを減らし、作業時間を大幅に短縮することが可能です。ツールの導入にはコストがかかるため、導入による効果と運用にかかるコストを見極めながら、費用対効果の高いツールを選びましょう。
こちらの記事では、業務を効率化するための方法について解説しています。おすすめのツールも取り上げているため、ぜひご覧ください。
まとめ
工数削減は企業にとって重要な経営課題です。限られた人材とコストで最大限の成果を上げるためには、業務の効率化が欠かせません。しかし、一朝一夕では実現できないため、現状分析から着手し、PDCAサイクルを回しながら、地道に取り組んでいくことが求められます。
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